『ベイビーわるきゅーれ』レビュー:ユニークで等身大な女子高生アクション!

映画のレビュー

映画を見てて嬉しくなる瞬間とは何でしょう。

私は食事であれゲームであれ同じような感覚を持っていて、それは「こんな面白い物語観たことない!」とか「こんな面白いゲームシステム初めてだ!」という感覚です。

食事に例えると分かりやすい。

「こんなに美味しいもの初めて食べた!」です。

初めて食べた美味しいものとは何かと言えば、食べたことのない味なのにそれが美味しいという意味です。

美味しいんだけど、どこかで食べたことあるよなぁというのはラーメン屋に行くとよく感じるし、旅行なら、この料理を食べるだけに来る場所じゃないなぁというのは珍しくありません。

ではこのベイビーわるきゅーれはどうなのかと言えば「こんな面白い映画久しぶりに観た!」という感覚にしてくれました。

二人の女子高生が担う裏稼業

まひろとちさとは殺し屋を請け負う凄腕。現役の女子高生でもあり若さが煌めく彼女たちだったが、そんな二人も卒業を迎えることになる。

殺しを斡旋する組織も、彼女たちを一人前の大人にするべく、卒業と同時に共同生活をしながらバイトを始めるように提案。

暴力を生業とする彼女たちにとって、アルバイトは本業なんかよりもずっと難しい課題だった。

ちひろは持ち前の社交性で少しずつコミュニティを築き始めるが、根暗なまひろは悪戦苦闘する。

初めての共同生活でぶつかり合う二人だったが、裏稼業独特の無慈悲な世界で力を合わせて切り抜けていく。

こういう人いるよなぁというキャラたちのズレた感覚

この映画ってこういう人いるよなぁというキャラの作り方が本当にうまい。

よくある定番のキャラクター、分かりやすく例えるなら、分かりやすすぎてもはや古典に分類されている金髪縦巻きロールとか赤髪ツインテールの現実版みたいな人たち。

金髪縦巻きロールとか、もうそれだけでそいつがどんなキャラかイメージが湧く。
要はこれらは既に記号と化しており、物語における句読点みたいなもので、物語に必要かというよりも何も考えずに配置可能という、将棋のルールだけ知ってる人にとっての飛車角くらい頼り甲斐のある存在。

これは正直、映画や漫画、小説といった物語が好きな人間にとってはあまり嬉しくない存在だ。

こうした定型化された存在というのは物語の虚構性を著しく遠ざけてしまう。
つまりは胡散臭くなる。

ならベイビーわるきゅーれもそうなのかというと全くそんなことがなく、現実にこういうズレた人いるよなぁというキャラが、そのキャラ性故に不器用な展開をしていき、もうどうしてこうなったみたいな物語が繰り広げられる。

これが非常に面白い。

終始もごもご話すまひろと、対極に位置するちひろの存在が対比になってくすりとする笑いがある。
ちひろに連れられて始めたバイト先が、まひろ一人なら絶対選ばないであろうメイドカフェだったり、掛け合いのズレから生まれるなんじゃこりゃが心地良いのだ。

敵役のヤクザの親分も変なところに怒りのスイッチがあったり、娘も常にハイな営業マンみたいだったり、唯一まともな息子がなんとか取りまとめようとするも、常人にはコントロールできるはずもなく物語はブレーキを失い暴走する。

どこかで見たことある人たちでピタゴラスイッチしているような、そんな訳のわからない感動がある。

ちさと役の高石さんの素晴らしい演技

素晴らしすぎます。

素なのか、素の演技が上手いのか、このどこかでみたことある女の子感のある演技に魅入ってしまう。

”ベイビーわるきゅーれ”はアクションが凄いという記事をよく見かけるけど、私はそれよりも高石さんのどこかにいる女の子感のある演技にずっと魅入ってました。

犬がフローリングを歩く音のモノマネとか、ネタ選びの女の子っぽさが良い。
チャッチャッチャッチャッチャ言いながら薬味取りに行く演出考えた人のセンスの良さよ!!

定点カメラでだらだらした演出が、彼女たちの普段通りの時間が感じられてとても良い。
押井監督の”紅い眼鏡”のラーメン食ってるシーンみたいな感じ。
スピルバーグとか絶対しない演出。

高石さん演じるちさとさんを観たいがために、もう何回か観ることになりそう。2も観るだろうし、今年の秋公開予定の3も観に行くだろうなぁ。

噂のアクションシーン

ジョン・ウィックの影響をバチバチに感じます。
まひろさんの拳銃の構え方なんてまさにですよ。

何かの間違いで防弾制服とか出てこなくて本当に良かった。

CQB好きなら真似せずにはおられんよなぁ。

実写パトレイバーのAKの先にカメラ載っけて俳優側を映す演出も真似してみるのはどうですかね?
あのカメラ位置を生み出した押井監督には感謝しかない。

ある用務員では全く二人でカバーし合ってなくてまひろさんのワンマンだったけど、ベイビーわるきゅーれはちゃんと連携してる。

阪元監督のアクションは”ザ・レイド”に影響を受けてるらしい。い加減に認めませんか。”ザ・レイド”がいかに名作であるかを。

このブログでは散々言ってるんです。
やっぱり”ザ・レイド”の記事を書かないといけないか。

インドネシアにおもしれー映画なんかねーだろって先入観は捨てましょう。
とはいえ私もザ・レイドくらいしかインドネシアの映画知らないけどね。

ベイビー・わるきゅーれのアクションにはまったなら”ジョン・ウィック””ザ・レイド”とあとは”リボーン”は鉄板でおすすめ。

CQB

Close Quarters Battle(近接戦闘術)の略。
主に閉鎖空間で入り組んだ地形での戦闘及びその戦闘方法を指す。

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