【絶対観てほしい映画】レフン監督の映画をおすすめする理由

映画のレビュー

レフン監督とは

ニコラス・ウィンディング・レフン監督といえば、スピルバーグ的映画の象徴とまではいかないが、映画好きならその名を知らない者はいないだろう。

レフン監督を知らない人向けに簡単に説明するならば、小島監督のゲームであるデスストランディングでハートマン役で出演していた彼が、何を隠そうレフン監督である。デスストは映像的にもゲーム的にも非常に面白いので是非遊んでほしい。クリフの登場シーンは何度観ても飽きない名シーン。デススト映画化するらしいけど、クリフのシーンだけは大きく改変してほしくないな〜。呪いのようにBBの行方だけを呟き、それ以外はハンドシグナルのみで意思疎通するのは大した設定だと思う。

話を戻して、レフン監督の初監督作を遡ると、90年代後半に公開されたプッシャーという映画になる。この作品はパート2、3と制作された。その後数作が公開されているのだが、2009年に公開されたヴァルハラ・ライジング以降、ドライヴ、オンリーゴッド、ネオンデーモンは作風が確立されており、いわゆる“らしさ”というか“作家性”が強く表れている。ちなみにヴァルハラ・ライジングの主役はマッツ・ミケルセン。デスストでクリフ役だったあの人。まさかマッツが小島監督作に出演するなんてなぁ。マッツがカジノロワイヤルに出演しているときに、小島監督がMGS3を作っていたと考えると感慨深いものがある。

強烈な作家性

レフン監督の映画は非常に独特なカラーリング処理が施されている。蛍光色同士のライトが同じ画面に何度もフレーミングするが、見辛いということもなく、むしろその独特な色彩に引き込まれていく。

また、暴力描写が緻密で全く容赦がない。“ソウ”の2作目以降みたいな、こんな死に方嫌でしょう?的な設定された暴力とは違い、あくまでこうされたら人体はこんな風に破壊されて死に至るだろうなという視点を徹底して描いているので、形容し難い生々しさがある。ヴァルハラ・ライジング以降の作品は全部そんな感じなんだけど、特にネオンデーモンはそんなに破壊的な死の表現はしていないにも関わらず、死に追い詰められていく描写がとんでもなく薄気味悪い。

なんというか、親切な人間のほんの少し裏側にある冷徹さの表現が秀逸。普段優しい人が暴力に走ったときの容赦のない行動、そうした二面性というのはなかなか受け入れ難いもので、こうした恐怖から観ていて気持ち悪くなる。(褒めている)しかしよくよく考えると、こうした人間というのは意外といるように思え、よく人間を観察していなければ描けない強烈な印象を残す。このときはホラー要素強めで、ちょっとしたホラー映画なんかよりもずっと怖い。

少ないセリフ

レフン監督の映画はかなりセリフが少ない。セリフなしで物語が展開されることが多く、夢と現実が交差するような演出もあるので、夢なのか現実なのか分からなくなるときがある。(これはあえてそうしており、視聴者も登場人物も何が夢か分からないように演出されている)

細部まで拘りのある小道具たち

レフン監督の映画には印象的な小道具が多い。オンリーゴッドではチャンが振るう刀の絶対的な力が印象的だ。ドライヴでは主人公であるドライバーが駆るシボレーのシェベルは忘れられない。流線型のマッスルカーといった、70年代の車に好んで乗るというのが主人公であるドライバーの拘りを表していて良い。レフン監督の主人公は皆寡黙だ。彼ら彼女らは言葉ではなく行動と結果で物語る

暗く極彩色のライトと、セリフのないカット。こうして暴力美に満ちたシーンはやがて観る者を荒れ狂う人間模様が織りなす映画世界へと誘う。

レフン監督は映画的

レフン監督の映画は実に映画的だ。そりゃ映画撮ってんだから当たり前だろと言われそうなので、ここからは一呼吸置いてから読み進めてほしい。

映画とは映像を扱うが故に映画だ。当初、映画にはセリフが無かった。チャップリンやトムとジェリーを知っているなら理解できるだろうが、これらには台詞がない。役者の演技、表情、周囲の小道具たちで物語が進む。時代は進んで映画は“トーキー映画”となり、複雑なストーリーを組めるようになった。それは映画に更なる深みと可能性をもたらしたが、やがて巨大な予算が組まれ、失敗が許されなくなった映画たちは万人が楽しめる爆発とメロドラマに絞られ、同じような映像ばかりになってしまった。だが映画とは、本来は面白い映像で観る者を魅せることだったはず。つまり映画とは何よりもまず、映像で物語ることが魅力的な媒体なのである。

映画を映画として観たとき、レフン監督の映画は非常に映画的だ。目を惹かれるカットが惜しみなく切られ、観るものを釘付けにする。派手さではなく、思わず何だこれはと唸る構図や演出で満ちている。

抽象的かつ叙情的。ときには登場人物が何かの象徴として描かれていたりと、難解な作品が多い。だが、もし貴方が映画を観ることに挑戦的ならば、レフン監督の作品はこの上ない娯楽作になるだろう。

まだレフン監督の映画を観たことが無いならドライヴがおすすめ。観やすく、そして何より刺激的だ。

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