【おすすめ】今おすすめしたい漫画”チェンソーマン”の魅力を解説

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チェンソーマンとは?

 チェンソーマンは藤本たつき作の、ジャンプ+で連載中の人気漫画だ。借金で極貧生活を強いられていた主人公デンジが、チェンソーの悪魔であるポチタと契約してデビルハンターとして活躍するストーリーである。

 上記の説明だけでは、チェンソーで戦うこと以外は特に気を引かれる要素はないように思える。が、いざページを捲ると、尖ったキャラクター性溢れるセリフと、描き込まれた印象的なカットが惜しみなく差し込まれていて、どうにも目が離せない。気が付けば最新話まで読み終わり、2周目に突入していた。作者は映画がとても好きなようで、映画は映像で語るように、チェンソーマンもセリフよりまず絵で語る

↑サムライソードの登場シーン。悪魔の臓物に塗れながら佇む姿は思わず息を飲む。
地獄の悪魔の登場シーン。デパートを掴もうとする巨大な手が風刺画的で面白い。

デンジのぶっ飛んだキャラクター

物語の主人公デンジは作中で何度も殺される。真っ二つにされたり、呪い殺されたりと、色とりどりの死に様を見せてくれる。しかしデンジが死の苦しみに耐えかねて、病んだり落ち込んだりすることはない。デンジは飯食えて楽しけりゃそれでいいのである

 デビルハンターは職業上よく人が死ぬ。なのでデンジは何度も仲間の死を経験している。しかしデンジがかつての仲間の死を憂うことはない。デンジは飯食えて楽しけりゃそれでいいのである

 デンジが好きになる女性はだいたいデンジを殺そうとする。デンジに寄ってくる者の大半はデンジの胸内にあるチェンソーの悪魔の心臓が目当てだからだ。だからデンジは好きな女性に何度も殺されそうになるのだが、デンジが恋愛に疲弊することはない。デンジは女の子といちゃいちゃできたらそれでいいのである

 デンジの考えは至ってシンプルで、いつだって迷いがない。決して人を騙したり貶めたりはしないが、欲望には正直な男だ。また、デンジは逆境を楽しむ。戦闘でどれだけ窮地に陥っても、苦しんだとしても、それを楽しむ強靭なメンタリティを有している。私はデンジのはちゃめちゃなキャラクター性に次第に惹かれていった。これは疲弊した現代人に必要な図々しさだと思う。

↑仲間が死んだあとのデンジ。デンジは誰が死んでも三日後には楽しく暮らしていけるという。

愚かさとそれ故に強靭なメンタリティを有する

 デンジは少年漫画的な王道な主人公とは言い難い。志もなければ社会的正義も持っていない。行動理由はいつも己の欲望のためであり、胸を揉むために血を流す。だからデンジというキャラは少し滑稽に描かれている。

↑変な顔をして呪い殺されるデンジ。
↑好きな人にプレゼントするはずだった花束を食べるデンジ。デンジは栄養のあるものは何でも飲み込む。

 しかし滑稽な姿を恥ずかしげもなく晒す反面、ひとたび戦闘になればその破天荒な戦いぶりに圧倒される。何度死ぬ思いをしてもデンジは胸を揉むため、キスをするために立ち上がる。

↑キスをするために三日三晩戦いるづけるデンジ。最後は悪魔の方が苦痛に耐えかねて自死する。
↑胸を揉むために戦うデンジ。彼が戦う理由はそれ以上も以下もない。

チェンソーマンは欲望のついでに誰か助けるダークヒーロー

 総じてチェンソーマンはシリアスで暗い作風だが、デンジはその湿っぽさを全て吹き飛ばす破天荒なキャラ性を帯びている。ここにチェンソーマンの最大の魅力がある。

 上記の通りデンジは主人公らしからぬ主人公だ。己の欲望のために戦っているが、ついでにその行動で救われる人間もいる。いわゆるダークヒーローである。

 物語の主人公といえば、物語の中心人物であるがゆえに様々な混乱に巻き込まれる。時には苦悩し、病み、しかし最後には立ち上がり困難へと再度立ち向かう。

 しかしデンジは苦悩しない。悩んでも3コマ後には立ち直る。デンジは義務教育も受けておらず、世間知らずで恥知らずである。しかしそれゆえに思考がシンプルで、簡素な仕組み特有の強靭さがある。簡素な仕組みとは頑丈さに直結する。今から半世紀近く前に製作されたAK-47アサルトライフルが今もなお世界中の傭兵やテロリストに愛用されるのは、過酷な環境でも動作不良を起こしにくく整備しやすいからだ。その信頼性は構造の簡素さに由来する。

 デンジの強さはそれによく似ている。

 私はデンジの破天荒ぶりに惹かれていった。それはきっと、私も現代人と同じように必要以上に悩み、心無い言葉に傷つく一般的な人間だからだろう。細かいことにうだうだせずに生きることができれば…もっと強いメンタルがあれば…誰もがそう思うだろう。

 だから私はデンジの行き着く先がどうなるのかが楽しみだ。もしかするとデンジも、シンプルな思考でいられなくなるときがくるのかもしれない。物事を大きく捉えることができるようになり、繊細さを抱き始めてしまうかもしれない。チェンソーの悪魔であるポチタは、強すぎるがゆえに孤独だったが、最後には誰かに抱きしめてもらうことを願った。地獄のヒーローチェンソーマンですら、その内には繊細さを宿していたのだ。奇しくもその願いを叶えた相手がデンジだったのは、何やら暗喩があるような気もする。

 総じてチェンソーマンはデンジの破天荒ぶりを見ても、絵を見ても楽しめる最高の漫画だ。何だか疲れた。元気が欲しい。そんな人ほど手に取って読んでみてほしい。

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